つなぎ牛舎からバイオベッドへ
27歳までの4年間、地元の農協職員として働きました。
牧場を継承する前に外の世界を知ることも重要という父の意向です。
農協時代に、様々な、組合員の牧場に触れることで自分なりにやってみたい酪農の構想が浮かんでいました。
当時、50頭ほどのつなぎ牛舎でしたが、自分が継ぐときにはフリーバーンで飼わせてもらうことに。
仕切りを取っ払い倍の100頭牛舎に増築しました。
牛が生産するものは、牛乳の他に『糞尿』があります。
牧草地や畑を持っていれば、作物の生育に欠かせない宝となるものですが、どちらも所有していなければ、ただのゴミになってしまいます。
私はこの糞尿を活かすフリーバーンにすることで、牛の負担を減らしもっと乳量も望めると思っていました。
しかし、初めから思い通りには行きませんでした。
大腸菌性の乳房炎の多発です。
この病気の発生を抑えるにはかなり時間を要しましたが、糞尿を発酵堆肥にしバイオベッドにすることで乳房炎を減らすことができています。
バイオベッドの管理は、おが粉、戻し堆肥を入れ、毎日かき混ぜることで管理しています。
この発酵堆肥は、植物や野菜用に一般販売も行っています。
乳を搾らなければ乳は出るもの
基本的には乳を搾らないようにしています。
乳を搾らないようにすれば、逆に乳は出るものです。
現在の乳量は35~40キロ程です。
穀物は極力与えない
乳を出すにはエネルギーは必要ですが、その分、牛が疲弊します。
疲弊しなければ牛は長く持続して乳を出すことが出来るのです。
牛の声を聞く
牛から出る言葉を拾って、牛の求めているようにしてあげる事で牛は結果を出してくれます。
後は牛が文句を言わないエサを食べさせることで、牛は勝手に元気になります。
特別変わったことではありません。
自分を牛に押し付けては酪農経営はやっていけません。
労働の負担を減らす
当牧場では2台のロボットで110頭の牛を搾乳しています。
牛の負担だけではなく、従業員の負担も減らすためです。
酪農に限らず、どこも人手不足で困っています。
この先もこの状況は変わることはないという予測から数年前に搾乳ロボットを導入しました。
搾乳で制約される時間が大幅に減ったことで労働はかなり楽になっています。
仲間づくり。先を見据えた酪農経営を
この先、酪農家が乳を搾るだけでは終わらない時代がきっと来ます。
常にアンテナを張って世の情勢を見極めて行くことが大切です。
そのためにも、仲間づくりが重要だと思っています。
現在、毎月、地元の仲間や業者も交え、座談会や勉強会を行い情報交換や悩み相談をしながら助け合っています。
全てにおいて武器を持っているのは酪農家です。
その武器を最大限に活かし経営して行くことが、酪農がやれる産業には積極的に参入しトータルで酪農をやって行く事が重要です。
牛乳だけではなく他のもので危険分散しながらやっていくのがこれからの酪農経営だと考えています。
これから酪農を目指す若い世代へ
今まで私達が通ってきた道より、これからの方が遥かに大変だと思います。
もっとスピードを上げいろいろなことにチャレンジしていくべきです。
また私達先輩も若い世代の道標になれるよう率先して進んでいきたいと思います。
しかし、いちばん重要な事は牛の声を聞くことです。
これは今までもこれからも変わることはありません。